婦人科勤めの私が婦人科に入院手術したら卵巣ガンだったお話

婦人科勤務の私が婦人科に入院手術そして卵巣がんの治療を受けた話を綴ります。

「がん患者における妊孕性温存治療の今後の動き」というシンポジウムを受けて。【がんと妊孕性について】

はじめに断っておきます。

私は卵巣がんの患者です。手術の際に患部の左卵巣だけでなく、ガッツリ癒着していた子宮、そして右の卵巣も摘出しています。

つまり、子宮も卵巣もありませんので、今後妊娠することは現実的には不可能です。卵子提供と子宮移植、もしくは借り腹をすれば授かれるけれど、もう私の因子は一つも含まれませんし、現実的ではないですからね・・・

だから、私のことではありません

私のことではないけれど、私が関係する分野のシンポジウム。

以前は真面目に聞いていなかった(ごめんなさい)んですが、自分が「がん患者」になって改めて勉強したくなりまして、勉強し始めました。

せっかく自分の分野の話ですし、しかも私はがん患者。患者としても医療者としても取り組みやすいお話なので、これからの私の課題にしようかと思ったんです。

 

そんなわけで

「がん患者における妊孕性温存治療の今後の動き」

というシンポジウムをオンラインで受けました。

私の勤務先、再びオンサイトで学会出席不可能になっちゃったんですよね・・・

 

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日本A-PART 学術講演会 プログラム

 

まず、皆さん「妊孕性」ってご存じでしょうか。

最近はすっかり「妊活」も普通のキーワードになってきているのでご存じの方も増えたかもしれません。

 

妊孕性とは、「妊娠する力」です。女性だけの問題ではありません。男性も大きくかかわりますし、子宮や卵巣、精巣の問題だけでなく、内分泌(ホルモン)や性機能なども関わることです。

 

そして、妊孕性温存治療、妊孕性温存療法とは、「がんなどの治療でで妊孕性が失われる可能性がある場合、その治療をする前にあらかじめ妊孕性を保っておく」治療です。

 

具体的には、卵子精子、受精卵などを治療前に凍結保存しておくこと。場合によっては卵巣や精巣の凍結保存の可能性もあります。現在の治療は主にこれらを示します。

 

私は明らかに勉強不足なので、今回のシンポジウムで、そうなのかぁと頷くことがたくさんありました。そして知らない人がいるのなら、なるべく早く皆に伝えたいと。

 

まず、この4月から不妊治療が保険適用されましたが、妊孕性温存の治療には保険は適用されません。その代わり、助成金制度があります。

各所在地別に案内がありますので、都道府県のHPから「妊孕性温存」などとキーワードを入れることにより詳細を見られると思います。

参考までに、東京都のHPは・・・

www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp

 

妊孕性温存治療を受ける方は、主にがん患者さんですが、がん患者だけではありません。たとえば、再生不良性貧血であるとか全身性エリテマトーデスの患者さんなども含まれます。要するに、お薬によって卵子精子に影響を受ける患者さんが対象なんですね。

昔は、がんになったら、まずはその治療。命あっての物種、妊娠?何言っているの?みたいな世の中でしたが、時代は変わりました。

乳がん患者さんの場合は、2010-2014年に治療している方の10年生存率(あれ?2014年はまだ10年経っていないけど・・・・)は実に95%以上なんです。

がんになっても今はがんサバイバーとしてその後の人生も長いわけです。だから子供を授かることができる身体であれば、ぜひ妊娠・出産をしていただきたいというのが国の(?)方針でもあるわけですね。

 

ちなみになんですが、stage IVの方ですとか、再発した方は残念ながらガンの治療が先です。妊孕性温存治療を即受けるというわけにはいかないそうです。

 

大体の目安は、抗がん剤治療が終わって2年ぐらい経過観察して問題なければ、妊娠に向けての治療を再開して良いそうです。

 

さらに、妊孕性温存治療を受けず、がん治療後の経過観察中になんとなくタイミングをとって、自分で妊娠しようとする人はなかなか授からず、やはり積極的に生殖医療(不妊治療)を行う方が妊娠していたそうですよ。

 

また、卵巣がんをはじめとする婦人科がんの手術をしただけは助成金は受けられず、抗がん剤治療をしていないと対象にならないんですね。抗がん剤治療をすることによって卵巣がダメージを受けるからです。ちなみに、子宮体がんの放射線治療も対象になりますが、体がんのホルモン療法だけだと対象にならないそうです。とにかく、ダメージを受ける可能性がある方が、妊孕性温存治療を受けて助成金も頂けるそうです。

あ、助成金の場合は年齢制限もありますよ。不妊治療の保険対象(助成金対象)と同じで43歳未満です。

 

卵巣がん患者さんは妊孕性なんて・・・と、ハナから諦める方もいらっしゃるかもしれませんが、両側卵巣がんはNGなんですが、例えば、片側卵巣がんで、片側は境界悪性である場合は、妊孕性温存治療を受けられる可能性があるそうです!!

 

とにかく、がんを患ってしまった。でも今後、子供を授かりたい。

そんなことを考えたら、即医師に相談しましょう!!

 

最後に、妊孕性温存治療実施施設一覧のリンクを張っておきます。

私の勤務する病院は載っていません。これから整備するところです^^;

a-part.jp